執筆者 | 遠藤 業鏡 (世界平和研究所) |
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発行日/NO. | 2017年3月 17-J-019 |
研究プロジェクト | 無形資産投資と生産性 -公的部門を含む各種投資との連関性及び投資配分の検討- |
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概要
本稿は、日本経済新聞社『環境経営度調査』の総合スコアを環境パフォーマンス(CEP)と捉え、それがどのような要因に規定されているか検証した。経営の質を表していると考えられるマネジメント・プラクティスのスコアが高い企業はCEPも高く、良い環境経営は良い経営の上に成り立っていることが確認された。取締役人数や社外取締役比率といったガバナンス要因もCEPに対してプラスに作用しており、広範な視点に立った意思決定が環境経営を高める効果があることもわかった。他方、海外ブロックホルダーの持株比率はCEPに対してマイナスに作用しており、対決的な株主権を行使する傾向にある投資家の存在が環境というステークホルダーを疎外していることが明らかとなった。上記要因をコントロールした上で国内ブロックホルダーの持株比率やファミリー企業の属性は追加的な説明力を有しなかった。これらの結果は、短期志向の投資家の圧力が環境経営に対する取締役のアドバイス機能を減殺させ、企業の長期的な収益力に悪影響を及ぼす可能性を示唆している。
Published: Endo, Kazumi, 2020. "Corporate governance beyond the shareholder–stakeholder dichotomy: Lessons from Japanese corporations' environmental performance," Business Strategy and the Environment, Vol. 29(4), pp. 1625-1633
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/bse.2457