自治体の雇用削減と公的サービス供給体制の変化

執筆者 喜多見 富太郎 (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-037
研究プロジェクト 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究
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概要

本稿は、近年の地方公務員数の急激な減少が、地域における公的サービス供給体制のあり方や地域雇用、サードセクターの経営環境などにどのような影響を与えているのかを実証的に検証するものである。特に地方創生の観点から、どのような自治体・職種で雇用削減が生じ、それが事務委託・補助などを通じて地域のサードセクター等との協働などに機能的に吸収されているのかを分析した。分析結果からは、第1に、直近の5年間でみると、調理員などの技能労務関係職員の減員を中心に一般市区町村での雇用削減が大きく、地域経済や自治体財政が窮迫した市区町村、行革の推進体力がある市区町村で雇用削減率が大きくなっている。第2に、市区町村の雇用増減率は、個人事業所・サードセクターなど会社以外の事業所での雇用増減率と有意な正の相関が見られる。また、市区町村による技能労務関係職員の雇用は失業対策として機能していることが窺われる。第3に、市区町村財政において雇用削減による「人件費」の節減額は「補助交付金」や「賃金」の増額に振り替わる一方で、「委託費」の増額にはつながらない。第4に、社会福祉法人の財務で、政府行政セクターからの事業委託収入は所在市区町村の委託費の増減と有意な正の相関を示すが、そのことはサードセクターの有給職員数の増減とは有意に結びついていない。