産業政策と産業集積:「産業クラスター計画」の評価

執筆者 大久保 敏弘 (慶應義塾大学) /岡崎 哲二 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2015年12月  15-J-063
研究プロジェクト 産業政策の歴史的評価
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概要

2001年以降、経済産業省はシリコンバレーを念頭に置いて、地域における人的ネットワーク形成を軸としたイノベーションの創出と地域活性化を目的とした産業クラスター計画を実施した。具体的には各地域の中堅・中小企業、大学などを主体とする19の産業クラスターを指定して、経済産業省がネットワーク形成の支援、地域金融機関との連携などを行った。本プロジェクトでは、各クラスターに参加した企業を経済産業省の資料によって同定し、それを東京商工リサーチのデータベースとマッチすることによって、産業クラスター計画への参加が、企業の売上高や取引先数にどのような影響を与えたかを定量的に評価した。

推計の結果、政策により企業の取引ネットワークを有意に拡大する効果を持ち、特に東京や東京周辺の企業との取引を有意に増加させた。また、クラスター政策は、企業の雇用と売り上げを有意に押し上げる効果を持っていた。クラスター政策の大都市圏との取引ネットワーク拡大効果は、特にそれまで大都市圏との取引関係を持たなかった企業について大きかった。クラスター政策は地方企業のネットワーク形成における「外延」(extensive margin)を広げる効果をもったといえる。さらに、こうした外延拡大効果は、第一地方銀行をメインバンクとする企業において特に大きいことが明らかになった。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:16-E-071