執筆者 | 鈴木 將文 (名古屋大学) |
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発行日/NO. | 2015年12月 15-J-061 |
研究プロジェクト | 標準と知財の企業戦略と政策の研究 |
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概要
技術標準の使用に必須となる発明に係る特許(標準必須特許)の権利行使については、特許権の適切な保護を確保しつつ、いわゆるホールド・アップ、ロイヤルティ・スタッキングなどの問題を生じないよう、特段の配慮が必要である。標準設定機関においても、特許関連の問題について、FRAND宣言の義務化など一定の対応をしているが、なお多くの法的問題が裁判所や行政機関(競争当局など)による法解釈・運用に委ねられている。具体的には、FRAND宣言の法的性質、差止め等民事救済措置を認める基準、FRAND条件による実施料の水準などである。本論文では、米国、欧州、中国、韓国などにおける動向も踏まえ、我が国の裁判例などの特徴や残された問題点について検討する。結論として、我が国の裁判例(知財高裁判決)は、FRAND宣言の付された標準必須特許に基づく差止めおよびFRANDライセンス料を超える損害賠償の請求を原則として否定した点で、国際的動向にも沿った妥当な判断を示したと評価できる。他方、(1) willing licenseesの認定基準などの具体化、(2) 標準必須特許権が移転した場合の処理、(3) FRANDライセンス料の算定を含む適切な紛争解決手段の確立などが、今後の課題として残されていると考えられる。