執筆者 | 齋藤 経史 (東京大学) /大橋 弘 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2015年10月 15-J-055 |
研究プロジェクト | 新しい産業政策に関わる基盤的研究 |
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概要
本稿では農家の農地規模に対する選択をモデル化し推定することによって、稲作生産調整に関する影響をシミュレーションによって分析する。
1970年に開始された稲作の生産調整は、主食用米の供給量を低く抑えることで高い米価を維持してきた。本稿では、個票データを用いた離散選択モデルに基づくシミュレーション分析を通じて、稲作生産調整が消費者および納税者に与える負担を定量的に明らかにした。
主食用米の生産数量目標は2018年度に廃止されることとされた。他方で、2025年度にむけて小麦・大豆や非主食用米への転作に高い目標が食料・農業・農村基本計画に掲げられており、「減反の廃止」とは言えないとの見方がある。具体的には、田に小麦・大豆、非主食用米を作付けた場合は、その農家に作物の品目と作付面積に応じて交付金(「水田活用の直接支払交付金」)が支給される。本稿の結果から、稲作生産調整政策による潜在的な消費者負担は無視し得ないことが明らかにされるとともに、米価に歪みを与えない政策の重要性が浮き彫りにされた。