執筆者 | 浜口 伸明 (ファカルティフェロー) |
---|---|
発行日/NO. | 2015年7月 15-J-044 |
研究プロジェクト | 地域経済の復興と成長の戦略に関する研究 |
ダウンロード/関連リンク |
概要
本研究では、東日本大震災後の復興について、工業統計調査の個票データを利用して、製造業の有形固定資産額、生産額、雇用の3つの指標の平成22年から24年の間の成長率を都道府県別に比較した。その結果は以下のとおりであった。(1)有形固定資産額の伸び率は、宮城県、岩手県、福島県において顕著に高かった。これらの県における震災前の有形固定資産額の変化率は相対的に低かった。(2)宮城県、岩手県、福島県の生産額の変化率は相対的に低かった。(3)雇用の伸びは宮城県において顕著に低かった。これらの分析結果から、震災後の復興支援策は設備投資を中心に行われたためそのインセンティブに従って、被災地において有形固定資産は急速に回復したが、それは必ずしも生産や雇用の回復を伴うものではなかったといえる。特に沿海地域に製造業の集積がある宮城県では復興支援策が雇用の回復に与えた効果は限定的であった。