執筆者 |
泉 敦子 (ワシントン大学) /権 赫旭 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2015年6月 15-J-032 |
研究プロジェクト | サービス産業に対する経済分析:生産性・経済厚生・政策評価 |
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概要
トップマネージメントは企業業績の重要な決定要因である。理論上では、取締役会が投資リターンを追求する株主に代わって、社長が企業のトップマネージャーとして適しているかどうかまたは経営努力をしているかどうかを監視し、業績が不振となれば 社長を強制交代させてパフォーマンスを改善させる責任を持つ。しかし実際のトップマネージメントへの監視は理論より複雑である。日本企業では金融機関、株式持合い会社、従業員主導でトップマネージメントの監視を行っていた歴史があり、これらのステークホルダーの企業経営目的が企業パフォーマンスの最大化ではない場合、社長を強制交代した際にパフォーマンスが上昇していない可能性がある。本稿は、日本とアメリカ企業の経営目的を比較するために、2000年から2007年に起こった社長強制交代前後の企業パフォーマンス、および企業規模と負債比率がどのように変化しているかについて日米比較の実証研究を行った。社長強制交代前は日米両企業でパフォーマンスが悪化し、交代後はアメリカ企業でのみパフォーマンスが改善しており、日本企業ではそのような改善が見られなかった。またアメリカ企業では、社長強制交代後に資産規模と従業員規模が大きく縮小し、日本企業では負債比率が低下していることが判明した。この結果は日米間における企業経営の目的に差が存在することを示唆している。