執筆者 |
細野 薫 (学習院大学) /滝澤 美帆 (東洋大学) |
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発行日/NO. | 2015年3月 15-J-005 |
研究プロジェクト | 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会 |
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概要
本稿では、1990年代後半以降の日本企業を対象として、非上場企業のIPO(新規株式公開)による資金調達の決定要因、および、資金調達後の企業パフォーマンスを分析した。
この結果、規模、ROA、全要素生産性(TFP)が高く、負債比率および費用比率が低い企業はIPOをする確率が高いこと、また、IPOをした企業は、その後、非IPO企業に比べて、設備投資比率、研究開発費比率、ROA、TFP、労働生産性、および雇用を有意に増加させていることが明らかになった。このうち、特にTFPや労働生産性の上昇は、企業年齢が若い企業、および、外部資金依存度が高い産業に属する企業において、顕著に見られた。また、これらの企業は、IPO後に負債比率を高めていることも明らかになった。これらの結果は、IPOが単に株価のミスプライシングを利用するためだけではなく、外部資金制約を緩和し、その後の設備投資、研究開発、収益性および生産性の向上に役立っていることを示している。