非財務情報の開示と外国人投資家による株式保有

執筆者 児玉 直美  (コンサルティングフェロー) /高村 静  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2014年12月  14-J-054
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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概要

1990年代後半から2000年代初めにかけての銀行株の価格下方修正、銀行の経営破たん、連結決算制度、持ち合い株式の時価評価導入などにより、持ち合いや金融機関による株式保有など、いわゆるインサイダー株主の比率が低下し、国内外機関投資家、個人などアウトサイダー株主による保有が増え、上場企業はアウトサイダーの利害を考慮した経営、アウトサイダーを意識した情報開示を意識せざるを得なくなった。企業の非財務情報の開示への要請の高まりに積極的に対応する企業が増え、06年より全上場企業と有力未上場企業を対象に東洋経済新報社が実施する「CSR(企業の社会的責任)企業調査」による情報開示企業比率は一貫して上昇している。非財務情報を開示する企業の世界金融危機後の業績は、そうでない企業と比較し安定的(変動が小さい)な傾向がある。また、非財務情報の開示と株式所有構造を見ると、特にリーマンショック後の株価低迷期において、開示企業では外国人保有比率が高まる関係が見られる。政府は、女性の活躍状況などの非財務情報の開示促進(「見える化」)を進めているが、このような情報開示が進めば、所有構造の変化を通じても経営の規律づけに繋がることが期待される。