組織成果につながる多様性の取り組みと風土

執筆者 谷口 真美  (早稲田大学 / マサチューセッツ工科大学)
発行日/NO. 2014年8月  14-J-042
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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概要

企業経営のグローバル化とともに企業を取り巻く環境の不確実性が増してきている。常に新しい製品やサービスを作り出し、新たな戦略を競合他社に比べてスピーディに実行しなければ、企業は持続的競争優位を構築しえない。本稿は、人材の多様性が集団のプロセスを経て組織成果にプラスにはたらくために企業が何をすべきか、具体的かつ実践的な取り組みを示す。分析1では、管理職と一般社員の性別多様性の高低により3つのグループに分け、組織成果につながる取り組みを検討した。管理職の性別多様性が高い企業では、従業員への気づきを促し、多様な人材を支援し包括していく取り組みが独創性を高めていた。一方、管理職の性別多様性が低い場合は、広く従業員を意思決定に参画させる風土が、独創性を高めていた。分析2では、企業トップのリーダーシップスタイル(変革型リーダーシップ)と多様性浸透施策が風土醸成に及ぼす影響を検討した。変革型リーダーシップは、管理職・一般社員の性別多様性の高低にかかわらず効果的だった。多様性浸透施策は、管理職の性別多様性が高い企業では効果がなかった。これは、男性従業員からの反発によるのかもしれない。分析3では、多様性をいかす取り組みと風土醸成を促すうえでの企業トップの変革型リーダーシップの影響と、取締役会メンバーによる調整効果を検討した。取締役会メンバーの年齢、他社経験、学歴、専門性という各属性によって、メンバー間に権限の偏りをつくらないことが重要だとの指摘を行った。