韓国の積極的雇用改善措置制度の導入とその効果および日本へのインプリケーション

執筆者 大沢 真知子  (日本女子大学) /金 明中  (ニッセイ基礎研究所)
発行日/NO. 2014年5月  14-J-030
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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概要

日本と同様に女性のM字就労が依然として残っている韓国では、2006年に民間部門に積極的雇用改善措置制度(Affirmative Action)を導入した。積極的雇用改善措置の実施により、女性従業員や女性管理職比率が徐々に上昇しており、職階における男女間の格差が少しずつ縮まっている。

本稿では、積極的雇用改善措置が女性の雇用や企業の業績に与えた影響について、韓国労働研究院の「事業体パネル調査」(Workplace Panel Survey)を使って分析した。実証研究の結果は積極的雇用改善措置対象企業の方が、女性雇用率や女性管理職比率が高いという結果がえられた。また、ROA(総資本利益率)も高いが、固定効果モデルの推計結果では10%水準で有意であった。

日本では、男女雇用機会均等法が1987年に施行されて以来、職場における男女の差別的な取り扱いを禁止するための法律改正がおこなわれている。2006年の改正においては、ポジティブ・アクションの推進などが盛り込まれた。しかし、強制力はなく、実効性に欠けるものになっている。

日本の高学歴女性においてM字型就労が形成される背後の理由をみると、結婚や育児での離職よりもキャリアの発展性が見込めないために離職している女性が多い。日本においても女性の能力活用をすすめるポジティブ・アクションを推進することが、日本の経済発展にも資するとおもわれる。