中国・韓国企業における女性の活躍と収益・生産性・積極的雇用改善措置制度

執筆者 石塚 浩美  (産業能率大学)
発行日/NO. 2014年5月  14-J-029
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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概要

本稿の目的は、女性の活用に関して共通点のある中国企業や韓国企業を対象に、女性の活躍と、収益性および生産性との関係を、統計的に明らかにして、日本経済発展のために政策提言することである。推定に際しては、「ジェンダー・ダイバーシティ経営」(GDM:Gender Diversity in Management)、ワークライフバランス施策、「人財」多様性などの影響を明示的に採用して検討する。また、韓国の積極的雇用改善措置制度(AA制度)の基準を達成している企業の特徴を確認する。

日本、中国、および韓国は、一般に企業文化や環境が異なるという前提はある[石塚(2014a)]。しかしながら、企業収益や生産性の高い企業には共通点があることが導出された。日本企業および政策へのインプリケ-ションを挙げる。1)管理職の女性割合が高いこと、2)女性の就業継続傾向が確認できること、3)育児休暇の取りやすさは、収益性とは相関は認められなかったが、生産性とは正の相関があること、4)“CSR部門設置企業”は、産業や企業規模によっては収益が高いこと、5)女性の採用を増やそうとしている企業は、収益が高い事、6)日本は女性役員が1人でもいる企業で収益が高い、ただし中国と韓国で経営層の女性比率をみると低いほうが収益・生産性共に高いこと、である。これらの項目は、人口減少が進む日本においてグローバル化を考慮した場合、企業収益や生産性に貢献するのではないだろうか。またGDMが実現された企業は男女共に活躍できるだけでなく、若年層などにとっても活躍できる“ダイバーシティ”が実現された企業となるであろう。

そのためのヒントは、本稿6で検証した韓国のAA制度が参考になると考える。創設後に女性従業員および管理職が微増しているが、さらに今後、対象企業が拡大しても、同女性比率は微増していくことが確認された。