女性は融資を受けられる可能性は低いのか?-新規開業パネル調査による分析-

執筆者 樋口 美雄  (ファカルティフェロー) /児玉 直美  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2014年3月  14-J-015
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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概要

多くの国で、女性は、開業率が低い一方、廃業率は高く、開業後の成長は低いと言われる。本来、開業やその後のパフォーマンスには、資金調達、人材確保、販売先・受注先の確保、調達先の確保などが影響を与えるにもかかわらず、こうした要因はコントロールしないまま、あたかも男女の性差によって開業率、企業のデフォルト確率、成長率に差があるがごとく扱う統計的差別理論によって、女性の資金調達を難しくしている可能性がある。本稿は男性に比べて女性の資金調達は実際難しいのか、もし本当に難しいとしたら、それが女性の開業パフォーマンスの低さに影響しているのかについて、開業企業のパネル調査を用いて実証分析することにする。

分析の結果から、融資を検討した企業サンプルを対象に融資確率を男女で比較すると、女性は男性に比べて11-14%融資確率が低いことが分かった。実際融資を申し込んだ企業サンプルで分析をすると、その差は2-3%に縮まる。つまり、女性は金融機関に申し込みをする前の段階で諦めることが多く、融資を申し込んだ段階では男性とほとんど融資確率に差は見られない。それでは女性はなぜ融資を諦めるのか? 分析結果によると、業種、規模、事業経験、債務償還能力、収益性、安全性などが同じような条件を持っている男性企業と女性企業では、成長率も投資額も同じ程度である。融資確率が同じ程度の男女のパフォーマンスが同じであることから、女性のみがいたずらに資金調達のハードルが高いわけではないことが分かった。