需要ショックと雇用調整-2008-09年グローバル金融危機の下での輸出企業の従業員構成変化-

執筆者 滝澤 美帆  (東洋大学) /鶴 光太郎  (ファカルティフェロー) /細野 薫  (学習院大学)
発行日/NO. 2014年2月  14-J-012
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本論文では、負の需要ショックが企業の従業員構成に及ぼす影響を分析する。従業員構成と企業の売上については、双方向の因果関係がありうるが、我々は、2008-2009年のグローバル金融危機を需要ショックの自然実験として活用し、グローバル金融危機後の日本の輸出企業の従業員構成の変化を、派遣労働者のシェアの変化に焦点を当てて分析する。その際、過去の派遣労働者のシェア、流動性資産の比率、および売上の不確実性の影響についても分析する。この結果、危機前の輸出比率、派遣労働比率の水準および増加幅が高い企業ほど、危機後に派遣労働者比率がより大きく低下したこと、逆に、危機前の流動性資産比率、および、売上高の変動率が大きい企業ほど、派遣労働者の比率の低下幅は小さかったことが明らかになった。これらの結果は、派遣労働者が、需要ショックに対するバッファーとして機能していることを示唆している。