成人うつに対するコンピュータ認知行動療法(CCBT)の臨床効果、及び費用対効果についての系統的レビュー

執筆者 宗 未来  (ロンドン大学キングスカレッジ)
発行日/NO. 2014年1月  14-J-003
研究プロジェクト 人的資本という観点から見たメンタルヘルスについての研究
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概要

うつ病に対する効果的な治療法として、認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioural Therapy)が注目されている。しかし、CBTのセラピストの数は依然として少なく、この治療を受けられる患者の数は限られている。この問題を解決するため、コンピュータを利用した自助プログラムであるコンピュータ認知行動療法(CCBT : Computerized CBT)が開発されている。本研究では、CCBTについてのメタ解析であるSo et al. (2013)で得られた結果に下位群分析を施行し、かつCCBTの費用対効果に関する系統的レビューを行うことを通じて、今後の成人うつへのCCBTの開発や運用における展望と課題を検証した。

既に、So et al.(2013)によって、CCBTについて、抑うつ症状が減少する一方で、脱落率が高いことが明らかにされており、本研究では、新たに、(1)周囲からの援助の有無、(2)世代間差、(3)うつ症状の重症度による差、(4)マルチメディア機能の有無において下位群分析が施行され、加えて費用対効果の系統的レビューが施行された。

採用基準を満たした14研究によるメタ解析が施行され、次の結果が得られた。CCBTを完全に1人で行うのではなく周囲からの援助があると効果は約2倍になるが、脱落率に差は認められなかった。30代、40代に比べて、50代以上では効果が半減し、20代では効果は認めず、脱落率においても30代、40代は高い傾向が示唆された。うつ重症度による有意な効果の差はなかったが、脱落率は重症ほど高かった。マルチメディア機能があっても効果に差はないが、脱落率を下げる可能性が示唆された。経済評価の系統的レビューにおいては、費用対効果と費用対便益の両方を含む3件の研究が検索された。すべての研究においてどちらの視点においてもCCBTに支持的な結果であった。

下位群分析の結果から、効果を高め脱落率を下げるためにCCBTへの周囲からの援助とマルチメディア機能の一層の充実が有効と期待された。費用対効果研究については、研究間の調査分析手法に異質性が認められた。