再生可能エネルギー普及促進策の経済分析~固定価格買取(FIT)制度と再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)制度のどちらが望ましいか?~

執筆者 日引 聡  (上智大学) /庫川 幸秀  (東京工業大学)
発行日/NO. 2013年10月  13-J-070
研究プロジェクト 大震災後の環境・エネルギー・資源戦略に関わる経済分析
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概要

再生可能エネルギーの導入を促進する政策手段として、近年、日本でも導入され、注目されているものに、固定価格買取(FITと略称する)制度、再生可能エネルギー利用割合基準(以下ではRPSと略称する)制度がある。本稿では、独占的に価格支配力を持つ一般電気事業者(外部費用を伴う火力発電)と価格受容者として競争的に行動する再生可能エネルギー事業者(外部費用を伴わない再生可能エネルギー)が発電を行う場合、FIT制度とRPS制度のどちらが経済厚生上望ましいかについて明らかにすることを目的としている。

RPS制度では、電力小売市場と再生可能エネルギー市場において一般電気事業者は価格支配力を発揮できる一方で、発電に応じて再生可能エネルギーを購入しなければならないため、発電の限界費用は大きくなる。一方、FIT制度では、一般電気事業者は電力小売市場で価格支配力を発揮できるが、再生可能エネルギー市場において買取価格が固定されているため、価格支配力は発揮できない。

分析の結果、限界外部費用が大きい場合には、RPS制度を実施することが望ましいことが明らかになった。これは、限界外部費用が大きい場合、発電限界費用を引き上げることで経済厚生のロスを減少させることが、価格支配力による経済厚生のロスと比較して、相対的に経済厚生の改善に役立つからである。さらに、RPS制度の場合、一般電気事業者に対して適切な初期割当を実施することで、ファーストベストを実現できることが明らかになった。