執筆者 |
枝村 一磨 (科学技術政策研究所) /岡田 羊祐 (一橋大学) |
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発行日/NO. | 2013年9月 13-J-062 |
研究プロジェクト | 大震災後の環境・エネルギー・資源戦略に関わる経済分析 |
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概要
本稿では、省エネルギー技術に関する無形資産を独自に定義して、通常の無形資産と省エネルギー技術に係る無形資産のそれぞれが企業価値(トービンのQ)に与える影響を分析する。また、Jaffe (1986)に基づく企業間の技術的近接性を考慮したスピルオーバー・プールを、個々の企業の特許全体および省エネルギー特許のそれぞれを基に計算して、これらのスピルオーバー効果が企業価値に与える影響も同時に分析する。有形資産と無形資産を分離可能とするGriliches (1981)のモデルに依拠した非線形推定の結果によれば、先行研究と同様に無形資産ストックが企業価値を高めることは確認できるものの、省エネ技術に関する無形資産ストックは企業価値を低めるという結果が得られた。省エネ技術開発を活発に行う企業ほど市場価値が相対的に低くなる傾向があるというわれわれの推計結果は、省エネ技術を開発した企業がその成果を専有化し企業価値に結びつけることが容易でないことを示唆している。一方、省エネ技術に関するスピルオーバー・プールは企業価値にプラスのインパクトを与えていた。これは、省エネに関する研究開発投資が社会的に見て最適な水準にないことを示唆している。結語で政策的な含意について述べる。