資金制約下にある企業の無形資産投資と企業価値

執筆者 滝澤 美帆  (東洋大学)
発行日/NO. 2013年5月  13-J-038
研究プロジェクト 日本における無形資産の研究
ダウンロード/関連リンク

概要

企業が保有する資産は、建物や構築物などの「見える資産(有形資産)」と、知識・技術や人的資本などの「見えない資産(無形資産)」に大別される。近年、後者を定量的に評価(可視化)し、その役割を正確に理解しようとする試みが進んでいる。本研究では、Hulten and Hao(2008)に従い、上場企業の財務データより、研究開発ストック、組織資本という2つの無形資産を計測し、無形資産が企業価値に与える影響を観察した。その結果、日本においては、無形資産の蓄積が、企業価値に強いプラスの影響を与えていることが分かった。また、トービンのQを説明変数とする通常の設備投資関数を有形の資産のみの場合と無形資産を含む場合の2通りで推計した。その結果、有形資産のみの結果と異なり、無形資産を含む場合、トービンのQの係数はプラスで有意な結果が得られた。このことから、設備投資行動のモデル化に当たって、無形資産を考慮する必要性が確認された。加えて、無形資産を含んだ設備投資モデルの推定結果から、より強い資金制約に直面している企業ほど、無形資産を含む設備投資が阻害されている可能性が示唆された。