輸入増加の影響:我が国製造業企業の国際化企業と国内企業の比較

執筆者 伊藤 公二  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2013年5月  13-J-034
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概要

高度な経済成長を安定的に維持している新興国は、世界貿易における比重を増しつつあるとともに、従来我が国のような先進国が競争力を有していた産業においても輸出力を強化している。

近年の貿易理論・実証の成果を踏まえると、新興国からの輸入増に対する企業の対応として、生産縮小や市場からの退出の他に、輸出等国際活動を通じて存続・発展を図る可能性もありえる。一方、国際化の属性に関係なく輸入の影響が産業全体に均等に及んでいるかもしれず、そのような場合国際活動によって輸入の影響が軽減される可能性は考えにくい。

そこで、本稿では、我が国の製造業企業を国際化活動の属性別に分類し、輸入増加の影響を確認することとした。具体的には、経済産業省「企業活動基本調査」のデータを、国際活動を行う企業(輸出企業、輸入企業、海外子会社保有企業)とその他の企業に分類し、アジア諸国からの輸入、その他途上国からの輸入、先進国からの輸入が各グループの従業者数成長率、実質売上高成長率等に及ぼす影響を検証した。

分析の結果、従業者数や正規職員数の変化率については、輸出企業・海外子会社保有企業の方が非輸出企業・海外子会社非保有企業と比較して、全ての地域からの輸入の影響が軽微であるという結果が得られた。この結果は、国際化活動が輸入の影響を雇用面である程度軽減する可能性があることを示唆している。