最低賃金が企業の資源配分の効率性に与える影響

執筆者 奥平 寛子  (岡山大学) /滝澤 美帆  (東洋大学) /大竹 文雄  (大阪大学) /鶴 光太郎  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2013年3月  13-J-010
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

最低賃金額の引き上げは企業側の負担を増やすのであろうか。本研究の目的は、実際に企業の利潤最大化行動から導かれる内部制約式が満たされているかどうかを推定することで、この問いに対し経済理論の観点から検証するものである。具体的には大規模な事業所個票データを用いて、各事業所の労働に関する限界生産物価値を推定し、その限界生産物価値と賃金率の乖離である「ギャップ(=労働の限界生産物価値-賃金率)」が最低賃金の変動によって、どのような影響を受けるかを検証した。分析の結果、最低賃金が上昇した場合、企業は雇用量の削減か負のギャップの拡大という形で対応していることが明らかになった。また、負のギャップの拡大はその後、4年程度は持続する。最低賃金の増額によって企業内部の資源配分の効率性が阻害されている点で、企業の負担は増えている。