大学院教育と人的資本の生産性

執筆者 森川 正之  (理事・副所長)
発行日/NO. 2011年12月  11-J-072
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概要

日本を含めて主要先進国で大学院卒の労働者が増加傾向にあり、イノベーションの担い手としての役割が高まっている。本稿では、大学院卒業者の賃金について「就業構造基本調査」等の公的統計に基づく観察事実を整理するとともに、シンプルな賃金関数を推計し、大学院教育が労働者の生産性に及ぼす効果、大学院教育の収益率について考察を行う。分析結果によれば、日本の大学院卒賃金プレミアムは約20%であり、米国や英国と同程度である。男性に比べて女性の大学院賃金プレミアムが大きい。大学院卒の労働者は60歳を超えてからの賃金の低下が小さく、かつ、高齢になっても就労からの引退が遅い。技術の高度化が進展し、人的資本強化の必要性が高まる中、大学院教育の充実は日本経済にとって大きな意味があり、同時に男女間賃金格差の縮小や高齢者の就労促進にも貢献する可能性が高い。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:12-E-009