執筆者 |
大竹 文雄 (大阪大学) /李 嬋娟 (大阪大学) |
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発行日/NO. | 2011年4月 11-J-054 |
研究プロジェクト | 労働市場制度改革 |
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概要
伝統的経済学では、派遣労働の規制緩和は、労働市場の効率性を高めるものだと考えられてきた。派遣会社は、労働者と仕事のマッチング機能に優れているため、失業期間や求人期間を短期化し、労働者にとっても企業にとっても厚生を高めるという役割を果たすと考えられる。その上、派遣労働は、正社員という安定的な仕事への「踏み石」として機能すると期待されてきた。本稿では、派遣労働者の時間割引率の特性に注目した分析を行った。第1に、派遣労働者の中には、非正規労働者の就業形態に長期間とどまるものもいれば、正社員に移動するものもいる。第2に、派遣労働者として長期間とどまるものタイプの労働者は、時間割引率が高いか、後回し行動をとるタイプの労働者である傾向がある。このような事実発見は、不安定な雇用形態を取りがちな労働者を早い段階で識別し、適切な指導をすることの重要性を示唆している。