人々はいつ働いているか?―深夜化と正規・非正規雇用の関係―

執筆者 黒田 祥子  (早稲田大学) /山本 勲  (慶応義塾大学)
発行日/NO. 2011年4月  11-J-053
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本稿は、『社会生活基本調査』の個票データを用いて、日本人の深夜就業の実態を把握し、深夜化が進行した要因を特定化することを試みたものである。分析の結果、1990年代から2000年代にかけての日本では、日中に働く人の割合が低下する一方で、深夜や早朝の時間帯に働く人の割合が趨勢的に増加していることが示唆された。また、この傾向は、特に非正規雇用者に顕著に観察されることがわかった。たとえば、非正規雇用者の平日午前11時の就業率は1996年の69.1%から2006年には63.5%へと5.6%低下した一方、平日深夜0時の就業率は1996年の4.1%から2006年には8.4%へと、倍以上増加していることが観察された。さらに、非正規雇用者の場合、景気変動等に伴う労働時間の変化を調整した場合でも、深夜や早朝の就業率の上昇は変わらず観察されることも示された。そこで、こうした現象が生じた要因を検証したところ、人口構成・職種構成等の変化とともに、正規雇用者の平日の労働時間の長時間化による帰宅時間の遅れが深夜の財・サービス需要を喚起し、その結果、非正規雇用の深夜就業が増加した可能性も示唆される結果が得られた。