日本経済成長の源泉はどこにあるのか:ミクロデータによる実証分析

執筆者 深尾 京司  (ファカルティフェロー) /権 赫旭  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2011年4月  11-J-045
研究プロジェクト サービス産業生産性向上に関する研究
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概要

本論文では、『事業所・企業統計調査』と『企業活動基本調査』の個票データを利用して、どのような特性を持つ企業が経済全体の雇用創出、資本蓄積、全要素生産性(TFP)上昇に寄与しているのか、また、どのような産業が雇用創出の源泉なのかについて分析した。得られた主な分析結果は以下の通りである。

(1)比較的社齢の低い企業や外資系企業が参入や成長を通じて雇用を創出している。外資による雇用の増加は、大部分がM&Aを通じてではなく、新規参入を通じで生じた。(2)雇用増加の大部分はサービス産業において生じており、雇用喪失のほとんどは生産の海外移転やリストラが続いた製造業や公共事業が減った建設業で起きた。(3)比較的社齢の低い企業が活発に資本蓄積を行ったのに対し、社齢の高い企業や日本企業の子会社の資本蓄積は停滞していた。(4)製造業、非製造業ともに、大企業や外資系企業のTFP水準やTFP上昇率が比較的高い。また、社齢が高いほど、製造業では輸出や研究開発をしている企業ほどTFPは水準・上昇率共に高かった。一方、社齢が高い独立系中小企業のTFPは水準・上昇率共に低い。この2つの企業群の生産性格差は、一貫して拡大傾向にある。 (5)製造業の大企業の多くは、活発な研究開発や国際化を進め、TFPは水準・上昇率共に高いが、生産規模を拡大していない。

雇用創出や設備投資の回復、生産性上昇を考える上で、社齢の若い企業や外資系企業の役割が重要であるといえよう。