企業ダイナミクスと企業規模分布の変化-技術条件等による影響のノンパラメトリック分析-

執筆者 後藤 康雄  (上席研究員)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-041
研究プロジェクト 金融の安定性と経済構造
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概要

本稿は、日本企業の個票データを用いて、企業規模分布の変化について実証分析するものである。分析の視点は大きく2つあり、退出、成長という企業ダイナミクスによって規模分布がどう変化するか、また金融制約や技術条件などの各種経済的条件がそうした変化にどう影響するかである。ノンパラメトリックな手法による分析の結果、経済的条件の強弱が、分布のトータルの変化にあまり影響していないようにみえる場合でも、退出、成長の要因に分解すると、それぞれに異なるインパクトを与えていることが分かる。金融制約の緩和やMES(最小最適規模)の上昇は、退出を通じた分布の変化を小さくする一方で成長による変化を拡大する。両者が逆方向に変化するため、トータルの変化への影響は小さくなるが、貿易比率については、退出と成長の影響が同方向に変化するため、企業規模の変化が大きく左右される。さらに、そうした退出、成長の影響への相対的なインパクトは、企業年齢などの企業属性によっても異なる可能性がある。これらの状況を鑑みると、金融制約などの経済的条件による企業規模分布の変化への影響については、さらに包括的、多面的なデータを用いた実証分析を進めることが望まれる。