スウェーデンのワーク・ライフ・バランス - 柔軟性と自律性のある働き方の実践 -

執筆者 高橋 美恵子  (大阪大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-040
研究プロジェクト ワーク・ライフ・バランス施策の国際比較と日本企業における課題の検討
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概要

本稿の目的は、ワーク・ライフ・バランス(WLB)の実現度が高い国とされるスウェーデンのWLBを支える仕組みと両立支援のあり方を同国の企業における実践をもとに考察することにある。まず国レベルでのWLB施策や議論の動向を概観した上で、5カ国の企業調査のデータ分析から、スウェーデンのWLB施策が男女の機会均等の理念に基づき展開されているという特徴を明らかにしている。次に現地企業へのヒアリング調査で得られた知見より、WLBの実現に向けた職場レベルでの取組みと実践について検討を行った。子育て世代の従業員に焦点を当てて、自己のWLBに向けた選択行動を潜在能力として捉え、同国における働き方の特徴を導出している。

スウェーデンでは、社会と企業いずれのレベルでも「男女共同参画」が実践され、性別にかかわらず家庭との両立を想定した働き方が1つの標準と位置付けられているため、働き方の「多様性」と「柔軟性」を可能とする基盤が形成され、個人のWLBの実現度が高いことがわかる。同国の経験は、柔軟な働き方が選択できる環境において、個人の潜在能力が高まり、自己のWLBの達成を促すというメカニズムの存在を示唆している。さらに企業へのヒアリング調査の結果から、スウェーデンの職場レベルでの働き方やマネジメントにおける特徴として、「責任の下での自律」と「信頼関係」という2つのキーワードが導き出された。