日本におけるサードセクターの範囲と経営実態

執筆者 後 房雄  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-027
研究プロジェクト 日本におけるサードセクターの全体像とその経営実態に関する調査研究
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概要

福祉国家や「大きな政府」の自由主義的な改革が進行すると同時に、市民社会における問題解決型の市民活動が拡大してきたのが最近の日本の状況である。しかし、この延長線上に、政府行政セクター、企業セクター、サードセクターの新しい分業・連携関係を構想するためには、いわゆる主務官庁制のもとで歴史的に極めて複雑に分岐してきた各種公益法人、特定非営利活動法人、協同組合、社会的企業などを広く包括したサードセクターの全体像とその経営実態を明らかにすることが必要である。

本論文では、サードセクターに関するアメリカ的アプローチ(非営利セクター論)とヨーロッパ的アプローチ(社会的経済論)の両方を参考にしながら、日本におけるサードセクターの範囲をどのように設定すべきかを論じる。

そのうえで、それに基づいて日本のサードセクターの組織と経営の実態を明らかにするためのアンケート調査を行ったので、その結果から得られた知見をいくつか紹介する。具体的には、日本におけるサードセクター組織は全体としてかなり堅実に経営されていること、透明性にはかなり問題が残ること、収入全体における公的資金の割合は29.5%にとどまり、また、「もらった収入(voluntary income)」と「稼いだ収入(earned income)」の割合が22.3%と77.8%であることから、きわめて行政依存的だという従来のサードセクターのイメージは再検討することが必要であること、事業収入を増大させ、組織の成長・発展をめざす組織が3割から5割存在すること、などが確認できた。