執筆者 |
塩路 悦朗 (一橋大学) |
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発行日/NO. | 2010年11月 10-J-055 |
研究プロジェクト | 東アジアの金融協力と最適為替バスケットの研究 |
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概要
本稿では日本の為替レートが輸出入物価・国内物価に与える影響がどのように推移してきたかを再検証する。ここでの分析の特徴は、時変係数VAR(ベクトル自己回帰)と呼ばれる手法を用いることにより、どのタイミングでどの程度のパススルー率(1%の為替レート変化が何%の価格変化を引き起こすかを表す指標)の変動が起きていたかを明らかにすることができる点にある。検証の対象とされるのは1980年1月から2010年1月までである。その結果から、まず、為替レートから輸入物価・国内物価へのパススルー率はいずれも期間内で低下傾向にあったことが確認される。国内物価へのパススルー率が1980年代に大きく低下しその後は徐々に低下していったのに対し、輸入物価へのパススルー率は1990年代後半にも大きな低下を見せている。これらに対し、輸出物価に対するパススルー率は、1980年代を中心にむしろ上昇している。