相互協議に関するいくつかの問題

執筆者 伊藤 剛志  (西村あさひ法律事務所)
発行日/NO. 2010年10月  10-J-053
研究プロジェクト 通商関係条約と税制
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概要

相互協議とは、二国間租税条約に定められる締約国の権限ある当局による協議のことであるが、近年、国際的取引の増加や各国の国際取引に対する税務執行行政の強化等を背景として、納税者が相互協議を申立てるケースが増加しており、その重要性が増している。相互協議はその実施の根拠が二国間租税条約に求められており、国内租税法との関係については明確でない点も多い。また、近時、OECD(経済協力開発機構)のモデル租税条約では、相互協議の延長として仲裁付託による最終解決の条項を定める改正が行われており、2010年8月に署名された、わが国とオランダ王国との間の新しい租税条約には、わが国が締結する租税条約としては始めて、仲裁付託条項が定められた。

本稿は、相互協議と寄附金課税、相互協議の申立権者、相互協議と国内救済手続との関係等の問題を検討するとともに、相互協議の延長として仲裁条項を定める場合の国内租税法との関係について若干の検討を行う。