執筆者 |
森川 正之 (副所長) |
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発行日/NO. | 2010年7月 10-J-043 |
研究プロジェクト | 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究 |
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概要
本稿は、日本の地域間経済格差について、公平性の観点から賃金及び幸福度に関する観察事実を整理したものである。要点は次の通りである。(1)個人レベルでの賃金の分散のうち都道府県間格差で説明される部分は1割に満たず、大部分は都道府県内の賃金格差である。(2)要因分解によれば、賃金水準の高い関東と低い東北や九州の間の名目賃金格差のうち7~8割は観測可能な個人特性および事業所特性並びに物価水準の違いで説明可能である。市区町村人口密度と賃金の正の関係のうち約半分は労働者特性・事業所特性で説明され、残りの半分のうち1/3~1/2は物価水準の違いで説明される。(3)都道府県別最低賃金を地域別の物価水準で補正・実質化すると、東京は最も実質最低賃金が低い。(4)個人の幸福度に対して所得水準は重要な影響を持っているが、地域間での幸福度の違いに対する所得水準の影響はほとんどない。以上の事実は、所得や幸福度の公平性という観点からは、地域ではなく個人ないし世帯に着目して再分配政策を考えることが適当なことを示している。