私立高等学校の授業料補助が生徒の中退に与える影響-日本の教育バウチャーの実証研究-

執筆者 赤林 英夫  (慶應義塾大学) /荒木 宏子  (慶應義塾大学大学院)
発行日/NO. 2010年2月  10-J-016
研究プロジェクト 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究
ダウンロード/関連リンク

概要

1990年代半ば以降、経済的理由による高校中退の増加は社会的問題となり、高等学校の無料化は国政選挙の争点の1つにもなった。従来、都道府県が独自に設定してきた私立高等学校授業料補助は、広い意味で私立教育バウチャーに該当すると考えられるが、数年前より私立教育バウチャーの導入について活発な議論が交わされているにもかかわらず、これまで、私立高等学校授業料補助の政策効果の検証は行われていない。

本稿では、東北・北陸地域の八県における、すべての全日制高等学校をカバーするデータセットを用いて、授業料補助が私立高等学校生徒の中途退学に与える影響を分析した。分析手法としては、学校学科の観測できない固有効果に配慮した線形回帰モデルに基づき、さらに、授業料補助政策が中途退学率に対して内生的に決定される可能性を考慮した操作変数法を利用して推計を行った。その結果、授業料補助の充実が私立高校生徒の中途退学率を引き下げる効果が、特に専門学科等において見いだされた。