大型投資は企業パフォーマンスを向上させるか

執筆者 田中賢治  (日本政策投資銀行) /宮川 努  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2009年11月  09-J-032
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概要

本論文では、理論面で不確実性と投資に伴う固定費用を前提として導出されるinvestment spikeを大型投資と捉え、その決定要因を調べるとともに、大型投資を実施した企業とそうでない企業で、その後のパフォーマンスに差が生じるかどうかを検証する。

大型投資の割合は社数で10-20%程度、金額ベースで25%程度を占め、設備投資全体の変動にも影響を与えている。この大型投資の決定要因をprobit推計で調べると、TobinのQの他、キャッシュ・フロー比率、産業内の同業他社が大型投資を実施している割合が重要である。

このprobit推計結果をもとに、propensity score matchingの手法を利用して、大型投資を実施した企業とそうでない企業について、その後の生産性、売上高、雇用量、利益率などに差が生じるかどうかを調べた。その結果、売上高と雇用については、大型投資を実施した企業とそうでない企業で明確な差が生じることが確認できた。またバブル崩壊後では、大型投資によって、売上高や雇用量だけでなく、生産性や償却前の利益率についても差が生じている。