日本のソフトウェア産業の業界構造と生産性に関する実証分析

執筆者 峰滝和典  (富士通総研主任研究員) /元橋 一之  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2007年5月  07-J-018
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概要

日本のIT産業はハードウェアと比較してソフトウェア産業の生産性が低いといわれている。その背景としては労働集約的な受注ソフトウェア比率が高いことや中小企業が中心で重層的な下請け構造が影響していると考えられる。

本稿ではIPA(情報処理推進機構)が2006年8月に実施した「第28回情報処理産業経営実態調査」における個票データを用いて、日本のソフトウェア産業の生産性の決定要因に関する実証分析を行った。ソフトウェア企業を「元請け」、「中間的下請け」、「最終下請け」に分類して、生産性レベルを比較した結果「中間的下請け」が最も低く、「元請け」と「最終下請け」については生産性のレベルにおいて統計的に有意な違いは見られなかった。ただし、「中間的下請け」において、情報処理実態試験で測った人的資源の質の高い企業においては、より高い生産性レベルにあることが分かった。「中間的下請け」企業は、ソフトウェア開発においてプロジェクトマネジメント能力が要求されるものの「元請け」企業と比較して人材育成が遅れており、ソフトウェア産業全体の生産性レベルを下げる原因となっている。