組織資本の定量的評価

執筆者 宮川 努  (前ファカルティフェロー / 学習院大学経済学部) /金 榮愨  (一橋大学大学院経済学研究科)
発行日/NO. 2006年6月  06-J-048
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概要

近年生産性の変動要因の一つとして、無形資産の役割が注目されている。その中でもIT革命に伴う生産性の向上との関連で注目されているのが、組織資本(organization capital)の役割である。本論文の目的は、日本の企業データを利用して、この組織資本の計測を行うことにある。まず企業価値データを利用して、各資産の蓄積に伴って組織資本の蓄積が行われているかどうかを実証的に検討する。次に生産関数アプローチを使って組織資本が生産性に与える影響を実証分析する。

分析の結果、企業価値による分析によって、有形固定資産の蓄積に関しては組織資本の蓄積をそれほど要していないこと、これに対して、知的資産やブランドイメージを形成する資産については、それを組織に定着させるために、相当の付帯的な費用、すなわち組織資本を企業内に蓄積していることがわかった。

また、ここで推計される組織資本の投資は、短期的に観測されるTFP変化率に下方のバイアスを生じさせるが、長期的に蓄積によって、観測されるTFP変化率に上方バイアスを生じさせる効果があることが確認された。