政府債務の持続可能性を担保する今後の財政運営のあり方に関するシミュレーション分析

執筆者 土居丈朗  (ファカルティフェロー/慶應義塾大学)
発行日/NO. 2006年4月  06-J-032
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概要

我が国の政府債務の持続可能性が懸念される中で、最近、我が国のSNAから簡単な会計的計算を基に推計し、我が国政府の純債務残高で見ると深刻な規模ではなく、十分に実現可能な政府収入対GDP比の水準を確保することよって政府債務は維持できる、と主張するBroda and Weinstein (2005)が発表された。しかし、このシミュレーション分析には楽観的な設定も含まれているため、本稿ではBroda and Weinstein (2005)を再検証することを通じて、我が国の政府債務の持続可能性がどのような政策運営によって担保できるかを、より客観的に考察する。

Broda and Weinstein (2005)を忠実に再現した上で、さらなる設定の変更を加えたシミュレーション分析を試み、次のような結果を得た。政府債務で、償還財源に充当することを想定していない中央政府や地方政府の金融資産を純債務として相殺しなかったり、直近の財政悪化を加味したりすると、政府債務を持続可能にするには、Broda and Weinstein (2005)の結果よりも高い政府収入対GDP比が必要であることが明らかになった。また、それは目下の30%程度から36%前後に引き上げなければならず、政府債務を持続可能にするには、社会保障給付の抑制とともに相当程度の増税が必要となる水準であることが示唆された。