公営企業のガバナンスと経営形態
地方分権下における官(国と地方)と民の役割分担の適正化

執筆者 赤井伸郎  (ファカルティフェロー/兵庫県立大学)
発行日/NO. 2006年3月  06-J-022
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概要

変動する時代の流れに対応し、また成熟化した社会における住民ニーズの変化に対応するためには、常に、権限は適材適所で配置されていなければならない。すなわち、官と民の役割分担、官内部での役割分担は、常に見直され、明確化されていなければならない。本稿では、公共交通における官と民の役割分担の観点から、望ましい事業手法・経営形態を議論する。具体的には、2節において公営企業の概要を議論した後、3節では官は民のノウハウを最大限に活かしながらそれをサポートするという観点から公営企業の役割の基準を整理した。4節において公営企業形態のガバナンスを議論した後、比較的サービス内容の範囲が統一的である日本の公営交通(バス・地下鉄)に焦点を当てて、その現状、効率化を阻害する障壁、改革の効果を提示した。最後に、これらの議論から得られる以下の政策提言を行った。第一は、官・民の役割分担の改革である。民のノウハウを活かしながら、公益を確保するように、様々な契約手法を用いて権限配分の適正化を行うことが必要である。ただし、これらの改革を実現可能にし、持続していくためには、官民それぞれに対して外部からの統治(ガバナンス)が必要である。第二は、国・地方の役割分担の改革である。官内部の役割分担の不明確さが、官と民の役割分担の改革を妨げている実態を踏まえて、国と地方の役割分担を明確にし国が責任を持つべき部分は、財源保障基準など関与の根拠を明確にし簡素な補助制度で、また、地方が責任を持つべき部分に関しては地方の自己責任によるファイナンスで事業を実施することが望ましい。