執筆者 |
胥 鵬 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2005年3月 05-J-012 |
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概要
90年代後半から、債権放棄などによる銀行主導の債務の私的整理が減少する一方、会社更生法や民事再生法の適用申請などによる債務の法的整理が急増している。この論文は1997年1月-2003年12月の間に私的整理と法的整理を行なった会社の整理直前期財務データを用いて、私的整理と法的整理の選択に対する債務構成の効果に関する実証分析を行う。金融機関の債権放棄による私的整理が主に大企業を中心に行なわれ、融資残高に占める特別管理下の日本長期信用銀行および新生銀行融資残高比率、負債合計に対する社債残高比率が高ければ高いほど私的整理よりも法的整理が選ばれる可能性が強い。また、私的整理サンプル企業の無担保融資割合が法的整理サンプル企業のより有意に高い。メインバンクについては、筆頭銀行融資割合が私的整理の可能性を高める。この論文は、私的整理と法的整理の選択に関する分析の数少ない試みの一つであり、今後の日本企業再生のあり方にとって意義深いといえよう。