国際投資協定の発展に関する歴史的考察:
WTO投資協定合意可能性と途上国関心事項の視点から

執筆者 相樂希美  (研究員)
発行日/NO. 2004年3月  04-J-023
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概要

WTOの新ラウンドにおいて、新たに投資協定の交渉を開始するか否かが先進国、途上国の間での争点の一つとなっている。既に2,181件もの二国間投資協定ネットワークが存在するため、多角的投資協定は不要だとの議論もある。しかし本稿では、後発発展途上国(LDCs)が、二国間投資協定や投資を巡る国際取決めから疎外され、これらの最も貧しい国々が参画し得る多角的投資協定の締結が急務であることを検証した。

また、過去の投資関連の国際協定の交渉経緯を詳細に検証することにより、先進国と途上国の主張の対立点を具体的に明らかにした。このことから、投資協定の要素のうち、途上国の関心事である開発政策の自由度の確保、投資家の行動規範を設けることや、多角的投資協定以外では実現できないインセンティブ競争の制限を盛り込むこと、さらに設立前段階での内国民待遇の付与等の投資自由化を推進するに際して、多国籍企業の管轄権の問題や国際投資紛争に関する国内司法手続きの優先を謳うカルボ原則の問題など、一部途上国で根強い紛争処理手続きを巡る課題への対処が、WTOでの投資協定締結のための鍵となることを検証した。