自動車税制を活用した地球温暖化防止政策の評価

執筆者 金本 良嗣  (ファカルティフェロー) /共著  藤原徹/共著  蓮池勝人
発行日/NO. 2002年1月  02-J-004
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概要

運輸部門における温暖化ガス排出量は大きく増加しており、このままでは削減目標の達成は困難な状況である。とりわけ自家用自動車からの排出量増加は著しい。本稿では、温暖化防止策として自動車関係税制を用いることが、(1) どの程度のCO2排出量削減効果をもつか、及び(2) 国民全体にとってどの程度の実質的な負担を強いることになるのかを定量的に評価する。実際のデータに基づいて構築した一般均衡モデルのシミュレーションによって、以下の結論を得た。(1)(燃費の悪い)普通車については重課し、(燃費の良い)小型車には軽課する税収中立型の保有税(あるいは、取得税)改革はCO2排出量をごくわずかしか削減しない。(2)CO2排出量削減のためには、保有税や取得税の増税よりも燃料税の増税の方が効果的である。(3)燃料税を増税し、保有税を減税する税収中立型の政策の方が単なる燃料税増税よりも社会的便益が大きい。データの制約から我々のモデルは2001年に導入された税制の「グリーン化」自体を扱うことはできないが、本稿で得られた結論は、税制の「グリーン化」がCO2排出量の削減には効果的でない可能性があることを示唆している。