機械工業と地域経済の発展:都道府県経済の成長要因に関する分析

執筆者 森川 正之
発行日/NO. 1997年5月  97-DOJ-81
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概要

本稿は、日本の都道府県別データを用いて、安定成長期(1975~91年)における地域経済のパフォーマンスを規定する要因を実証的に分折したものである。「基盤技術産業」と言われる機械工業と地域経済の関係に着目するとともに、経済活動の集積、社会資本、産業立地政策などの影響についてもあわせて検討を行った。

極めてシンプルな分折ではあるが、いくつかの興味深い結論が得られた。分折結果の要点は次の通りである。

1)経済成長や産業立地に影響を及ぼすと考えられる要因をコントロールした上で、機械工業の地域経済に占めるウエイトが高いほど、当該地域の成長が高くなるという傾向が認められた。これは機械工業自体の成長によるものではなく、他産業の生産性の向上をもたらすことを通じてのものであり、機械工業の他産業に対する(地理的近接性に基づく)何らかの外部効果の存在が示唆される。
2)経済活動の集積は、地域経済の成長を規定する重要な要因であった。これは、県民総生産の成長についても、製造業出荷額の成長についても妥当した。
3)初期の経済水準が低いほどその後の成長率が高いといういわゆる「収斂」現象が、安定成長期の日本の都道府県について確認された。
4)工業立地政策が製造業の地域間配分に一定の影響を待っていたことを示唆する結果 が見られた。