欧州における日本企業の現地生産と部品調達の『ジャパナイゼーション』:事務機器産業と自動車産業の現地部品調達

執筆者 池田 正隆
発行日/NO. 1996年12月  96-DOJ-72
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概要

わが国の組立型機械産業を代表する事務機器産業と自動車産業は、1980年代の後半に入って、欧州諸国との間に生じた貿易摩擦問題、あるいはプラザ合意に基づく円高の持続的傾向により、輸出額を漸減させて現地生産への切り替えを本格化させた。

両産業とも欧州への生産シフトを推進するに当たって、現地での部品調達問題が最重要課題として提起された。しかし、両産業の間には、分業生産システムの展開度合の差異により、また産業の規模、歴史、性格などの差異により、取り組まれるべき調達政策はその様相を異にしている。

事務機器産業の場合、日本のそれに比べてはるかに弱体な現地下請システムが原因となって、部品の核心となるべきユニット部品の現地調達が困難なため、日系事務機器メーカーは部品の内部生産や日本、東南アジアからの部品輸入に大きく依存しなければならなかった。 しかし、現地生産の本格化とともに、欧州の伝統的な下請取引慣行であるBidding(競争入札)方式から日本型コストブレイクダウン(オープンブック)方式への転換が進行し、現地サプライヤー、サブコントラクターの中には、ユニット部品メーカー形成の可能性も生まれてきている。

こうした状況に比べて、日系自動車メーカーは、既に現地に展開するユニット部品メーカー層をいかに選別・再編成して行くかが当面の課題であり、さらに1990年代には自動車生産の現地開発が推進されて、「デザイン・イン(=日本型製品開発システム)」が現地導入されることによって、サプライヤーの選別化は開発力を備えるシステムサブライヤーを中心に強力に進められている。