日米貿易の相互依存:その分析と展望

執筆者 瓜生 不二夫/木地 三千子/永井 宏/中橋 靖
発行日/NO. 1992年11月  92-DOJ-42
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概要

日米の経済摩擦が問題になって久しいが、両国の経済関係の実態を分析してみると、貿易、投資の両面で相互依存関係が進展しているように思われる。本研究では特に日米貿易について分析を行ってみた。

日本にとり米国は最大の貿易相手国であり、米国にとっても日本は隣国カナダに次ぐ貿易相手国であるが、両国間の輸出入品目を見ると比較優位構造が顕著に現れている。日本から米国へは主に工業製品、特に自動車や事務機器が輸出されており、逆に米国から日本へは工業製品もあるが一次産品が多く輸出されている。

さらに、対世界からの総輸入に占める日米おのおの相手国のウェイトの高い品目で、かつ自国内生産が少量のものを調べていくと、日本から米国ではテレビやレコーダー、工作機械などが、米国から日本では大豆等農水産物や飛行機などがこれに該当しだ。 これらの品目については日米両国で互いに相手国に依存する部分が大きいものと考えられる。また、技術貿易については日本は米国より多くの技術を輸入しているが、近年日本のハイテク製品に関する技術輸出の伸びはめざましいものがある。

製造業の多くの分野で日本企業の競争力は米国企業を上回っており、個別製品分野で両国間の貿易摩擦は激化している。しかし、鉄鋼製品の一部、半導体、工作機械、自動車部品などは米国企業の生産工程に組み込まれており、米国産業の競争力向上に必要不可欠な状況にある。また、激しい競合関係にある日米企業の間でも、直接投資の進展等を通じた企業のグローバル化から技術、生産、販売面の提携関係は強化されている面がある。今後米国企業の競争力の強化と日米企業間の提携の広がりの中で、両国企業の健全な協調と競争の関係が築かれていくことが、両国経済にとって望ましい姿であると考えられる。