生産性上昇要因の分析:最近の研究のサーベイ

執筆者 中島 隆信
発行日/NO. 1990年8月  90-DOJ-19
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概要

本論文の目的は、生産性に関する近年の研究を概観し、我々の視点からそれらを再考察することである。Solow(1957)以降、成長会計の理論を基礎に多くの生産性分析がなされてきた。成長会計理論において、生産性上昇率はアウトプット上昇率からインプット上昇率を引いた残差として導かれる。世界経済が拡大している間は、成長会計の方法論に関して誰も疑問視するものはいなかった。なぜなら、同時に生産性も上昇していたからである。しかし、1960年代半ば以後、特に第1次石油危機を境に、多くの先進諸国において急速な生産性の下落が観察された。成長会計理論の枠組みではこのような現象を説明することが困難であったため、多くの経済学者が伝統的成長会計理論を改善し、新しい方法を展開しようと試みた。ここでは、このような理論およびそれに基づく実証結果を紹介し、あわせて将来の展望を考察する。