わが国サービス産業の対外投資 -IT活用拡大に期待

吉田 泰彦
コンサルティングフェロー

GDP・雇用の7割

世界経済のサービス化は、先進諸国、途上国を問わずGDP、雇用の両面において進展しており、世界経済全体におけるサービス産業の重要性は今後ますます高まっていくことが予想される。わが国においてもその傾向は同様であり、サービス産業はすでにGDP、雇用の約7割を占めている。

このような中で世界のサービス産業は、近年直接投資を通じて急速にグローバル展開を実現した。高い生産性を実現するサービス産業が海外に展開し、規模の利益を獲得することで一層高い生産性を実現して高付加価値産業として発展する好循環を生んでいるのである。

一方、わが国の対外直接投資残高に占めるサービス産業のシェアは欧米など先進諸国に比べ極めて低く、わが国のサービス産業の対外直接投資残高は米国の約11分の1、EU15カ国の約30分の1に過ぎない水準であり、わが国サービス産業のグローバル展開は大きく立ち遅れている。

さらに、わが国サービス産業の実質付加価値上昇率は低迷している。その要因は、IT投資・活用の不足と全要素生産性上昇率の低迷による労働生産性上昇率の低迷にある。

こうした内外のサービス産業をめぐる状況を踏まえれば、わが国サービス産業は今後全要素生産性を高めつつ海外展開を積極的に図ることが重要である。

そのため、わが国サービス産業には不足するIT投資と導入設備の徹底した活用の推進が求められる。