2025年には50歳以上の有権者が全有権者に占める割合は6割に達する勢いです。このままでは政治的意思決定の時間的視野はさらに狭くなる可能性があります。是正の鍵を握るのは選挙制度です。
スペインの哲学者のホセ・オルテガ・イ・ガセットは名著「大衆の反逆」において「民主主義は、その形式や発達程度とは無関係に、1つのとるにたりない技術的細目にその健全さを左右される。その細目とは選挙の手続きである。それ以外のことは二次的である。もし選挙制度が適切で、現実に合致していれば、なにもかもうまくいく」と述べています。
選挙制度改革では、都市部と地方との間に存在する「1票の格差是正」などが頻繁に議論されています。急速に少子高齢化が進展する中でさらに検討が必要なテーマは「政治的意思決定の時間的視野を広くする選挙制度」です。
具体的には、世代間の政治力を均衡させるための「世代別選挙区制」があります。有権者の人口構成比に応じて世代ごとに議員の議席数を配分する方法です。子供に選挙権を付与した上で親が代理で投票する「ドメイン投票制」や、世代別選挙区の拡張で各世代の平均余命に応じて世代ごとに議席数を配分する「余命投票制」といった新しい選挙制度も提唱されています。
20-34歳 | 35-49歳 | 50歳以上 | |
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2015年 | 19.1% | 25.6% | 55.3% |
2025年 | 17.6% | 21.5% | 60.9% |
2030年 | 17.3% | 19.9% | 62.8% |
2040年 | 16.1% | 19.3% | 64.6% |
2050年 | 14.7% | 19.2% | 66.1% |
(出所)国立社会保障・人口問題研究所の資料を基に作成 |
超高齢化社会が到来するのはこれからであり、財政・社会保障の抜本改革が不可欠です。その意思決定の土台となる民主主義のあり方についても、選挙権のない将来世代の利益を含め、今から議論を深めておく必要があります。
2015年11月6日 日本経済新聞「やさしい経済学―公共政策を考える 人口減少下での政治」に掲載