小泉進次郎農相がコメ問題について矢継ぎ早に提案をしている。
コメの生産量の統計が実際より多すぎるという生産者の指摘を受けて、作況指数の廃止などを決めている。これがコメ価格高騰の原因なら調査方法は長年継続しているので、それ以前にも今回と同じ問題が起きたはずである。
卸売業者が前年同期比で5倍の利益を稼いでいるなど流通に問題があるので、その可視化を図るという。しかし、昨夏以降に価格が上昇したので、それ以前に安く買ったコメが高く売れただけであり、改善してもコメの卸売業者の利益率は他の業種と比べて低い水準である。
卸売業者は集荷、分荷、精米加工などさまざまな機能を果たしている。もし、この機能が要らなければ、とっくに淘汰されていただろう。卸売業者は巨大な農協組織と強力なバイイングパワーを持つ大手スーパーの間に挟まれ、低い収益率でコメ流通の円滑化という使命を果たしているのが実情だろう。それどころか、減反でコメの市場規模が半減したため廃業していった多数の中小卸売業者こそ、農政の最大の被害者である。
コメには卸売市場のような場所がなくなってしまっている。現物の公正な価格形成センターは2011年に閉鎖された。世界最初の先物市場は大阪・堂島のコメ市場だったのに、度重なる要請にもかかわらずコメには本格的な先物市場は認められていない。
生産者は価格変動に対するリスクヘッジの機能を奪われている。また、減反を廃止して1千万トン生産していれば、40万トン不足したからといって国内の650万トンの需要を満たすことに問題はなかった。市場の欠如や減反という本質的な問題から目をそらされているのではないかと心配している。
2025年7月1日 日本経済新聞(夕刊)「十字路」に掲載