通貨安競争再燃か 求められる一層の円高阻止

中島 厚志
理事長

際立つ円の独歩高

緊迫したスペイン経済金融情勢を受けて、足元再び円高基調が強まっている。ここ数カ月で見ても、主要通貨では円だけが通貨高に動いており、それ以外の主要通貨が総じて対ドルで下落している中では、円の独歩高は際立っている(図表1)。

今回の円高で気がかりなのは、通貨安となっている主要国の多くが貿易黒字国・地域であることだ。図表1で示した国々・地域で見ても、唯一の通貨高国日本が貿易赤字であるのにたいして、通貨安の14カ国・地域のうち貿易黒字国・地域は9もある。

足元の為替相場変動の背景には、資金がリスクを避けて相対的に安全と目される円やドルなどに逃避していることがある。しかし、世界経済の減速などで主要国の金利水準も歴史的な水準にまで低下しており、このままでは2010年秋のような通貨安競争が再燃しかねない。

図:主要通貨の対ドル変化率
図:主要通貨の対ドル変化率
(注)5月1日に対する7月23日の対ドル変化率
(出所)Datastream

主要国の低金利は歴史的水準

2010年秋にかけての通貨安競争は、アメリカの景気下支えのための積極的な量的金融緩和策がドル安を招いたことがひとつの要因だった。足元の円高は欧州債務危機の深刻化が背景だが、主要国の景気対策としての金融緩和策がさらに世界的な通貨安・通貨高の動きを加速させる可能性がある。

全文は「WEDGE Infinity」にて。

2012年7月27日 WEDGE Infinityに掲載

2012年8月16日掲載