IoT/インダストリー4.0が与えるインパクト

第69回「日本企業の極めて低い生産性;『独り勝ちのドイツ』とどこが違うのか」

岩本 晃一
上席研究員

1 個人では超優秀な日本人

OECDは、72カ国・地域の15歳児に対して、2000年から3年ごとに「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」を行っている。2015年の調査には、世界約54万人が参加、日本からは198校、約6600人が参加した。その結果、

  • 科学的リテラシー 日本 第1位 平均得点538点(OECD平均493点)
  • 数学的リテラシー 日本 第1位 平均得点532点(OECD平均490点)
  • 読解力 日本 第6位 平均得点516点(OECD平均493点)

となった。PISAは、人間の全ての面を正確に評価するものではないが、少なくとも、15歳時点では日本人は極めて優秀であることがわかる。

2 企業体になると世界に負ける日本人-極めて低い生産性-

ところが、超優秀な15歳の日本人が大人に成長し、会社に就職して組織で仕事を始めると、どういう訳かとたんに、労働生産性は20年連続で主要先進7ヶ国最下位、OECD34加盟国のなかでも22位に落ちてしまう。日本の若者は、決して仕事の手を抜いている訳ではない。毎日夜遅くまで必死で残業しているが、日本企業のパフォーマンスは低い。いまや日本人の労働生産性の低さは世界的に有名だが、いまだに日本人の多くが日本が世界的に強いと信じ込んでいる「ものづくり」の分野でも、日本人の生産性は先進国のなかで、ほとんどビリに近い(図1)。日本の企業組織のどこかがおかしい。先日、ある友人が「うちの会社に入ってくる新人は、入社時は目がきらきらと輝いているが、1年経つと、死んだ魚のような目になる」といっていた。その表現が必ずしも全ての若者を表現している訳ではないが、一面では真実であろう。ここに日本経済の構造問題の本質がある。

図1:製造業における生産性の国際比較
図1:製造業における生産性の国際比較
出所:Christoph Schröder, Produktivität und Lohnstückkosten der Industrie im internationalen Vergleich(2014),IW-Trends.p6

1995年のインターネット元年から約20年間で、ビッグビジネスとして成功したのは、グーグル、フェイスブック、アマゾン、ヤフーなど全て米国企業である。彼らは、モノを作らず、データを処理するだけで短期間でビッグビジネスを実現した。この間、パソコンやスマホからはかなりの日本製が無くなった。日本の電機産業はグローバル競争に負けつづけ、地方での工場閉鎖が相次いだ。これまで日本経済は自動車と電機の2つの産業で支えられていたが、そのうちの1本の柱を失った(図2)。

今後、日本の自動車産業も、電気自動車(EV)化、人工知能(AI)搭載、所有からシェアリングへ、という大きな構造変化の波のなかで、果たしてグローバル競争に勝てるのだろうか。もし自動車産業も電機産業と同様、グローバル競争に負けたら日本経済は一体どうなるのだろうか、と思うとぞっとする。

図2:工業統計に見る10年毎の日本の製造業の構造変化
図2:工業統計に見る10年毎の日本の製造業の構造変化
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出典)工業統計

3 「独り勝ちのドイツ」とは

筆者は、これまで長年に渡って「独り勝ち」といわれているドイツ経済の強さを解明することに尽力してきた。ドイツと日本を単純に比較すると、

  • 日本はドイツに比べて、人口が1.5倍、企業数が1.5倍、GDPが1.5倍である。
  • だが、ドイツは日本に比べて、年間労働時間が2/3しかなく、時間当たり賃金が1.5倍もある。
  • 日本もドイツも製造業が主力産業であるが、ドイツの製造業の生産性は日本の1.5倍もある。

ドイツに旅行すれば、すぐにわかることだが、ドイツは日曜日、商店街は全て休みになる。すなわち、365日のうち、1/7は経済活動を完全に休止している。平日は残業しないでさっさと家に帰り、戸外のレストランでながながとおしゃべりに興じている。それでありながら、「独り勝ち」といわれるほど強力な経済力を有している。週末でも、めいっぱい経済活動している日本は、そのドイツの2/3の生産性しかない。「なぜ?」という単純な疑問が、私を動かしてきた動機である。

ドイツは日本と同様、製造業を主力産業とし、人口減少・少子高齢化が進行している。1989年に東西統一を行い、西独マルクの約1/10であった東独マルクを等価交換し、西独に比べて生産性が約1/3の東独2000万人を抱え込んだ。景気が大きく落ち込み、「欧州の病人(Sick man of Europe)」と呼ばれたが十数年でユーロ圏で最強の経済力を有するに至り、「欧州経済のエンジン」「独り勝ちのドイツ」と呼ばれるまでになった。いまや、ギリシャ問題や移民問題などを見ればわかるように、ドイツの経済力無くして欧州は存続しえない。

潜在成長率を見ると、ドイツは人口減少の影響で2000年以降、「労働投入寄与度」はマイナスだが、投資とイノベーションが大きく寄与し、潜在成長率は約1.7%程度ある。一方、最近の日本の潜在成長率は、計測方法にも依るが、0〜1%程度しかない(図3)。今後とも、人口減少・少子高齢化が進行するため、「労働投入寄与度」はマイナスが続くと予想されるが、日本は、ドイツ並の投資とイノベーションを実現できれば、ドイツ並の潜在成長率を達成可能である。ドイツ人に出来てなぜ日本人にできないのだろうか。

図3:日本のGDPと潜在成長率の推移
図3:日本のGDPと洗剤成長率の推移
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ドイツの内需は、人口減少・少子高齢化の影響で極めて弱い。そのため、製造業、特に中小企業の輸出振興に取り組み、輸出主導による経済成長が定着した。全輸出額に占める中小企業の割合は約19%(日本は約3%)、中小企業全体のうち輸出を行う企業数は9.5%(日本は2.8%)。2016年のモノの貿易総額は世界第3位、経済収支は世界第1位の貿易大国、対GDP比の輸出依存度は38.7%(日本は15.2%)である。

中小企業は、大企業を凌ぐペースで成長、失業率低下に貢献したのも中小企業である。このためドイツにおいて中小企業は国の経済の屋台骨を支えるという意味を込めて「ミッテルシュタンド(Mittelstand)」と呼ばれている。中小企業の特徴は、①外国指向が強い「隠れたチャンピオン」が圧倒的に多いこと、②それが大都市に集中せずに全国各地に点在していること、③そのROAが大きいこと(図4)、④Family owned company (家族経営、同族経営)が95%と多いこと、である。

図4:米日独の製造業の収益力の変動要因分解
図4:米日独の製造業の収益力の変動要因分解
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出典)通商白書2017

失業率は、欧州先進国のなかでも極めて低く、特に若年失業率の低さが際立っている。ほぼ完全雇用を実現したことは「ドイツの奇跡」と呼ばれている。国家財政を見ると、「シュレーダー改革」の後、一時期、財政赤字が膨らんだが、順調な経済発展の結果、税収が増え、2012年以降は財政黒字を継続、2015年に財政均衡を実現し、赤字国債発行を46年ぶりに停止した。日本の国家財政もドイツに見習うべきことが多い。

4 ドイツの経済の強さの要因とは

ドイツ経済の強さは、さまざまな指標を日本経済と比較することで確認することができるが、それは結果であり、知りたいのは、なぜ、そうした高い指標が出てくるのか、ということである。その背景を述べようとすると、筆者の色々な調査から得られる印象論でしかない。未だに、その背景を科学的に証明できている訳ではない。

1)お金を稼ぐことに「素直」「正直」である。国の仕組み全体が、教育も含め、モノを作って世界に売り、お金を稼ぐために出来上がっている。世界で売れる優秀な「made in Germany」の製品を開発し、世界市場で売る、という「基本に忠実」である。ドイツ人に比べて日本人は、お金を稼ぐことを前面に出すと何か悪いことでもしているように感じるのか、社会への貢献を強調したり、本当はお金を稼ぎたい筈なのに、その本心を隠そうとする。

2) 製造業の繁栄こそが、国家の繁栄、国民の幸福、という国民の大きなコンセンサス、自分たちは製造業で食べていく、という国民全体の強い意志、製造業の競争力強化のための投資であれば無条件で容認されるという雰囲気がある。

3)日本人もドイツ人も、考えることはほとんど大差はない。だが、ドイツ人は成果を出すまで最後までやり遂げる、という点が違う。ドイツ人は理論どおりにやれば、理論どおりの成果が出る筈だと「真面目」「愚直」に実行し、そして理論どおりの成果を出している。一方、日本人は、「確かにそれが正論かもしれないが現実には難しい」という意見が「現実をわかっているやつだ」と評価されて会議を通ったり、新しいプロジェクトには熱心だが、一旦プロジェクトが開始すると多くの人が関心を無くしてうやむやになり、やがて次の新しいプロジェクトに熱中するという現象がよく見られる。たとえれば、「子供のサッカー」に見える。みんなでボールを追いかけているのだ。

4) ドイツ人は、総論が良ければ、すぐにプロジェクトをスタートさせる。途中で問題が発生すれば、その都度、議論し、方向転換しながら、最終的には、目標に到達してしまう。日本人のように、詰めて詰めて石橋をたたいて渡らない、という性格と真反対である。ドイツ人は、これまでの歴史上、理想と考えられた目標にも何とか達成してきた経験から、自らの能力に自信を持っている。そして、新たな理想が出現しても、すぐにスタートしてしまう。

5) 地方政府(州市)が、お金を稼ぐことに極めて一生懸命である。首長の選挙でも、その点を強調する。一方、日本の地方政府はお金を稼ぐことに無関心である。だが、お金の配分(教育、福祉)には極めて熱心である。選挙でもお金の配分内容を競っている。

ドイツ地方政府の動機は、企業が移転されると最も困る者が最も頑張る、という単純な動機である。ドイツ国内で企業活動すれば確かにコストは高いが、それを上回る利益を稼げるビジネス環境を提供すれば、低コスト国に移転せず地元に残ってくれる筈、と信じて企業を支援している。経済的な豊かさを与えることが住民にとっての最大の幸福であり、経済的豊かさの提供こそが若い女性を惹きつけ、人口増の好循環を実現させると考えている。ドイツの地方政府は、優秀な若者や若い女性、企業を誘致し、つなぎ止めておくために大変な努力をしている。日本の地方自治体でここまで努力しているところを筆者は知らない。

ドイツ政府の考え方は、お金があれば何でもできる、お金がなければ、教育福祉も何もできないという単純な発想でしかない。これと比較すれば、日本では、お金はどこからか沸いてくると思っているのか、お金の使い方ばかりが議論の対象となっている。ドイツは、「稼ぎがいい一家の大黒柱」が高く評価される。

6)1990年代末、ハーバード大学マイケル・ポーター教授が「産業クラスター」を提唱し、2000年頃に世界中に普及した。ドイツ地方政府は、中小企業振興策として産業クラスターを積極的に導入、ドイツ全体で産業クラスターが普及した。産業クラスターの中の中核的機能である新製品開発を支援するイノベーションの源泉として、フラウンホーファー、ヘルムホルツ、ライプニッツ、マックスプランク、総合大学・工科大学などが各地域にきめ細かく存在している。なかでも欧州最大の「応用研究・結果重視」の研究機関であるフラウンホーファー研究所の存在感が大き。

7) 在外ドイツ商工会議所は、世界80カ国に120カ所の拠点を持ち、ドイツから外国に進出するドイツ企業を支援するきめ細かな業務を実施している。駐日ドイツ商工会議所のマンフレッド・ホフマン特別代表へのインタビュー(2015年6月)によれば、日本とドイツの中小企業の決定的な差は、グローバル化しているか、そうでないかである。ドイツも日本と同様に国内市場は縮小しているため、生き残るためには外国に進出しなければならないため中小企業も必死で努力している。ドイツでは、中小企業が外国に進出しようと考えると、まず地元の商工会議所に相談に行く。すると直ちに在外の商工会議所を紹介される。在外商工会議所の手厚く、きめ細かいサービスが、力の弱い中小企業であっても、グローバル展開を可能にし、「隠れたチャンピオン」を産み出すことにつながっている。

8) 「働き方」でいえば、某日系ドイツ支社の社長の言葉を紹介したい。「ドイツ人と一緒に働いてみて、その生産性の高さを肌で感じている。彼らは勤務中におしゃべりをしない。朝出勤すれば、その日にやるべきことをどうすれば時間内に終えるかを考え、無駄話せずに仕事し、勤務中にやり終え、終業時間が来るとさっさと帰って行く」「95%の完成度のものを、膨大な時間とエネルギーを使って98%にしない。むしろ創造的なことに時間を使う」「義務的な仕事を早く終わらせて、創造的なことに多くの時間を投じることに価値を見いだしている」。

9) ドイツの大学は無償である。外国人留学生も無償である。上述したように、国全体がお金を稼いで、政府財政にお金があるので、教育はやりたいことができている。学生は企業にインターンに行って、大学に帰ってくるということを何度か繰り返し、30歳くらいまでに、自分に合った仕事場を見つけて就職する。企業にとっては、「必要な人を、必要なときに」雇うのである。何度も大学に帰る事が出来るのも、大学が無償であることが大きい。一方、世界のなかでも特異な日本の「新卒一括採用方式」は、「会社の命令であれば、何でもやります。どこへでも行きます」というゼネラリスト養成を目的としている。日本企業では、スペシャリストはいらないのだ。2人の意見を足して2で割る政治型調整を得意とするゼネラリスト集団である。そのため、現代のような大きな時代の変革の時代にあって、時代を切り拓くスペシャリストがいない。

10) ユーロ安の恩恵を受けてきたこと、欧州他国とは地続きであること、海外進出に際して言語的なハードルが低いことなども確かに大きな要因であった。だが、マクロ環境からイノベーションは生まれず、世界市場で売れる新製品も生まれず、新たな海外販路開拓も生まれない。筆者が会ったドイツ人らは、うるさいくらいに「イノベーション」という言葉を何度も繰り返していた。このイノベーションに対するドイツ人の強いこだわりこそが、ドイツの産業競争力が伸びていった最も根源的な原動力だと感じた。

5 高度成長時期に形成された日本企業での「働き方」

これまでは、日本企業の経営者が余り知恵を絞らず、大した商品を作らなくても人口が増えていたので、商品が売れ、企業は成長していた。だが、人口減少下で売り上げを伸ばすには、売れる商品、顧客が欲しいと思う商品を作る必要があるが、いきなり、売れる商品を作れ、といわれてもなかなかできない。「おれが若い頃は、こうやったんだ」という経験則でしか判断できない経営者では、人口減少の時代には通じない。

なぜ、日産やサンヨーは社長が外国人に替わっただけで蘇ったのだろうか。なぜ外国人に出来て日本人にできないのだろうか。

過去の人口増時代の「経験則」でなく、未知の人口減少時代でも売れる商品を開発する新規プロジェクトは、どうすれば成功するか、データと論理による科学的な企業経営が必要であり、欧米では既にこの時代に入っている。だから日本企業は負け続けるのではないか。しかも日本は、同じ失敗を繰り返す国として有名、失敗の分析をせず、みんなでかばい合って、頭を低くして嵐が通り過ぎるのを待つだけ。

たとえば、会議前の「根回し」をすることで、当初案のカドがとれてどんどん丸くなる。専務と常務に「忖度」し、2人の考えを足して2で割って「玉虫色」化し、会議を通すヤツが「できるヤツ」として出世する「調整型」「忖度型」が日本企業の幹部になってきた。PISAで高得点を取る優秀な日本人は、会社のなかで生き残るために、こうした環境に過剰に適用しようとする。世界で最も優秀な日本人の才能はここに使われているのではないだろうか。

日本は過去の成功体験が役に立たない時代に突入しているにもかかわらず、新しい時代のグローバル競争の戦い方を学ぼうとせず、失敗を恐れ、保身に走っている。それがいまの若者社会にも影響している(図5)。

図5:いまの若者社会の構図
図5:いまの若者社会の構図

6 第4次産業革命時代の厳しい競争に備えた準備をしていない日本

これまでのあらゆるアンケート調査により、日本企業における情報化投資の傾向は正確に把握されている。それは、投資分野は、コスト削減・人員削減を指向する「守りの投資」の方向に向かい、新しいビジネスモデルを開発して売上げ増を指向する 「攻めの投資」には向かっていない、ということである。「守りの投資」で得られる利益は微々たるものなので、経営者は、情報化投資をしてもさほど儲からない、そのため益々情報化投資に消極的になるという負のスパイラルに陥っている。日本企業は、情報化投資に対する期待の低さから、情報分野の研究開発投資も低調である。私はそうした日本人の傾向を「日本の常識は世界の非常識」と呼んでいる。

ドイツ、米国、日本の合計300人の産業専門家にアンケート調査したMckinset&Company(2016)によれば、日本企業の経営者は、早い技術革新のスピードに強い脅威を感じているにもかかわらず、デジタル技術に関する社員の能力を強化しなければならないとは考えていない。日本企業の経営者は、不確実な将来や急激な技術変革を目の前にして、自社を成長に導く自信がなく、立ちすくんでいる。そして、日本の経営者だけが、自社の成長見通しについて、自信を持っていない。

7 第4次産業革命時代の働き方・人材育成

雇用に関する過去の実績を見ると、スキル度が中レベルの職が失われ、スキル度が低・高レベルの職が増加している。スキル度が中レベルの職でも、人と人とのコミュニケーションを必要とする職種は増え、ルーティン業務の事務職が減っている。

日本は、労働形態の現状維持の傾向が強く、機械で代替できる部分で人間が働いていたり、高スキル人材を養成していない。技術進歩に対して雇用状態が合っていないため、生産性低下、企業競争力低下を招いている。雇用を守るため、機械化による効率化よりも人間による非効率な仕事を温存している。順送り人事、過去と同じ業務の繰り返し、働き方の現状維持をしている(図6、図7)。

図6:Job polarization in the EU, Japan and US
Percentage-point change in employment shares by occupation category, 2002-2014
図6:Job polarization in the EU, Japan and US
Source) OCED calculations based on EU-LFS, Japanese Labour Force Survey and BLS Current Population Survey
図7:我が国企業の人材育成投資額の推移
図7:我が国企業の人材育成投資額の推移
出典)通商白書2017

これから育成すべき日本に必要な人材は、

1) 第4次産業革命という新しい時代を牽引し、世界とのグローバル競争に勝つためのリーダーの育成。
ドイツでは、ミュンヘン工科大学やミュンヘン大学でデータサイエンティスト修士課程を出た若者が、企業のなかで幹部となり、やがて役員となって、企業を牽引することになるだろう。

2) 人間でなければできない仕事を担う人材の育成。
過去の前例を「学習」し判断するといった過去の前例の延長線上にある判断やルーティン業務はAIに代替される。
①過去に前例のない事柄や新しい創造的な仕事
②デジタル機器を使いこなして、データ分析をしたり、科学的な経営のサポートをする人材
③コミュニケーション能力・対人能力を持った人材
④AIを常に更新できるAIよりも進んだ知能を持った人材

8 さいごに

今、日本経済は2つの意味で大きな変革の時代、すなわち大きな時代の転換期にある。1つめは、人口減少・少子高齢化が急速に進んでいることである。人口増の時代は、たいした知恵がなくても、商品・サービスを作りさえすれば、なんとなく、まあまあ売れていた。だが、人口減の時代にあっては、市場が縮小しているのであり、本当に知恵を絞り、深く考えなければ、売れる商品・サービスは生まれない。2つめは、第4次産業革命といわれる激しい技術革新である。日本の経営者は、この技術進歩についていっていない。そうした大きな時代の変革のなかで、日本の経営者は、失敗して責任を問われることを恐れ、チャレンジしない。自分の経営者としての任期を終えるのをじっと待っている。その結果、最も大きな影響を受けているのは若者である。企業がほとんど雇用を増やさない、増やしたとしてもその多くは非正規でしかない、という企業の姿勢が、今の若者に対して、将来に対する漠然とした不安を抱かせている。そして、消費よりも貯蓄へ、年金保険支払い率の減少、といった社会問題を起こし、「合成の誤謬」を生み、日本を負のスパイラルへと導いている。

第4次産業革命とは、巨大市場の先行利得を目指して世界中の企業が熾烈なグローバル競争を展開する時代である。他業種からの参入、オープンプラットフォームなど新しいビジネスモデルの出現など過去に例のない大きな変化が出現する。過去20年と比較して、今後の20年はその数倍の大規模な変革が起きる。しかも、その変革が全ての産業分野に及ぶ。第4次産業革命は、全ての国にとって大きく飛躍できる絶好の機会であると同時に、その反面、競争に負ければ一気に沈没する可能性もある。日本は危機感を持って、第4次産業革命の戦いを勝ち抜かなければならない。

参考文献

2018年3月16日掲載

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