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電波探検隊

※本プロジェクトは、終了しております。

周波数帯利用実態調査

5. 周波数利用状況(III)

最後に、問題の5Ghz帯である。これは、IEEE802.11aが利用する帯域であることから、諸外国では周波数の再配置の検討が進んでいるところである。しかし、利用状況一覧を見ていただければわかるように、この帯域は航空無線航行用途、船舶レーダーなど、開放が難しそうな用途が並んでいる。それゆえに、現在我が国ではIEEE802.11aの利用は事実上屋内での利用に限られてしまっており、また割り当て帯域もそれほど大きくない。

また、誰に割り当てられているか、どの目的に利用されているか等の、利用実態が極めてわかりにくいのも5Ghz帯域の特徴であり、周波数帳を見ても、殆ど利用実態が見えてこない。そこで、このエリアの調査には公表資料に加えてヒアリングなどを活用しつつ、実態の概略をつかむことにした。

  • 5000-5091Mhz:航空無線航行(精測進入着陸装置(MLS))

    ここで割り当てられているMLS装置は、航空機が空港に着陸する際に正確な高度や方向を誘導するために設置されているもの(詳細は下記を参照)だが、認可された無線局数を見ると、

    JAL航空実用辞典より引用

    (3)マイクロ波着陸装置(MLS:microwave landing system)マイクロウェーブ・ランディング・システム(MLS)は,マイクロ波を用いて航空機を進入から着陸(接地も含む)まで誘導する装置である。ビームの直進性,安定性に優れている,進入経路を自由に設定することが できるなどの長所があるが,着陸装置の主流となるには至っていない。

    たったの三局しかない。しかもすべてが実験局である。つまり、新技術であるMLS装置は、まだ実験段階であり、全国配備などは行われていないようなのだ。
    そういう事情もあり、このエリアの一部、5.03Ghz-5.09Ghzの約60Mhz分が屋外利用可能なIEEE802.11a用帯域として開放されることとなった。

  • 5091-5150Mhz:固定・航空無線航行

    このエリアは周波数帳を見ても誰が使っているかが全くわからない。そこで、他の資料を当たってみると、この帯域区分は新設されたもので、まだ無線局に割り当てられていない。(将来的に何かの用途のために控置されている可能性もあるので、要調査であろう)

  • 5150-5250Mhz:航空無線航行(5100-5200Mhz)・固定衛星

    この部分は、屋内利用に限定して5Ghz帯の無線LAN用として割り当てられているが、屋内利用のみに止まっている理由は同じ帯域を航空無線航行業務 が使っているからである。この用途に、無線局が18局、割り当てられている。

    またこの帯域のうち、5150-5216Mhzは、無線測緯衛星用にも(二次的業務として)使うことが出来ると定められている。これはいわゆるGPS衛星(免許不要局)であり、屋内利用に限定された背景には、GPSとの干渉も懸念されたと思われる。

  • 5250-5255Mhz:無線標定・宇宙探査衛星・宇宙研究

    この帯域で特徴的なのは、宇宙探査衛星等に使われるという目的のほかに「無線標定」業務、つまり(気象)レーダーに割り当てられているという点である。この部分では実用局、実験局ともにゼロとなっている。(免許が認可されていない)ただしここ注目すべきは、P列の「防衛庁関係」の但し書きである。そこには

    気象用レーダーシステムと共用を図りつつ、防衛用の無線標定業務にも使用する
    と記載されており、この部分が、防衛用に使用されていることを物語っている。つまり、この帯域を他の業務に用いることはきわめて難しいということを意味する。

  • 5255-5350Mhz:無線標定・宇宙探査衛星・宇宙研究

    この帯域も上記同様に防衛用の無線標定業務にも使用するという但し書きがついているが、無線局としての認可は16局出されている。そのうち実験局が6つあるが、それ以外の 実用局は移動無線局として認可されている。(おそらく防衛用であろう)

  • 5350-5460Mhz:航空無線航行・無線標定・地球探査衛星(能動)

    このエリアは、実用局はないものの、実験局として5局が認可されている。航空無線航行は、一般、公共業務用の航空機用レーダー用途に割り当てられている。つまり、安全にかかわる 分野なので、このエリアも開放は難しいであろう。

  • 5460-5470Mhz:航空無線航行・無線標定

    このエリアは、無線局認可がゼロであるが、一応航空無線航行(一般・公共)向けに割り当てられている。具体的な利用状況・使用者が謎である理由は不明である。

  • 5470-5600Mhz:海上無線航行・無線標定

    これは無線評定と海上無線航行(船舶レーダー)に割り当てられている帯域である。無線局の認可も多く、41局認可されているのだが、そのうち実験局が39もあり、実用局は2局しかない。(両方とも移動局で、無線標定が1局、船舶局が1局)おそらく、開発用に割り振られているのであろう。

  • 5600-5700Mhz:移動・無線標定・アマチュア

    この帯域は、主として2つの用途に用いられている。まず、アマチュア無線(5650-5850Mhz:二次業務)に割り当てられているほか、有料道路料金収受システム(ETC)もこの周波数帯を用いている。(※今年の最新のデータから固定業務が削除された)
    周波数帳では、この5600-5700Mhzと5700-5850Mhzは同一帯域として扱われているが、実は両者の間には大きな違いがある。それは「防衛用業務の有無」である。

    防衛用の無線標定業務及び移動業務に使用する(-5725Mhzまで)
    5725Mhz以上も同様に防衛用に使用されるが、ここに関しては、将来、移動通信のために 追加的に割り当てられることがあり得るとし、追加的な割当は行わず控置されている状況である。(将来的に開放される可能性が少しあることを意味する)
    無線局の認可は15局行われており、実験局がそのうち13を占める。(2つの実用局はそれぞれアマチュアx1、陸上移動標定業務x1)

  • 5700-5850Mhz:移動・無線標定・アマチュア

    このエリアも、基本的な割当は5600-5700の帯域と同様である。(細かい使途割当には違いがある)ここは防衛用に使用されていないことから、認可されている無線局は非常に多い。(207局)ただし、ここでも実験局が204と圧倒的多数を占めており、実用局は移動局3つ(基地局3、地球局1周波数帯)のみである。
    なお、5725-5875Mhzは医療用のISMバンド(無免許帯)として使われている。

  • 5850-5925Mhz:固定・固定衛星(地球から宇宙)・移動

    この帯域は放送業務用(移動、固定)、電気通信業務用、公共業務用に割り当てられている。周波数帳を見ても、この帯域で傍受されているのは放送中継波(STL回線)や、中継用の新FPU波である。これはこの下の5925-6425Mhzでも同様であるが、下の帯域と異なるのは認可された無線局の少なさ(67局)と移動局の存在である。

  • 5925-6425Mhz:固定・固定衛星(地球から宇宙)

    5850-5925Mhz帯域とは用途などは殆ど変わらないが、こちらは無線認可局数が9469と大変多くなっているところに特徴がある。また、実験局もほとんど無く、実用局ばかりである。
    用途は、6Ghz帯電気通信固定局及び、携帯移動衛星通信(対地静止衛星中継)、携帯基地地球局(送信)となっている。

6. まとめへ>>

  1. 総論
  2. 調査方法
  3. 周波数の利用状況(I)
  4. 周波数の利用状況(II)
  5. 周波数の利用状況(III)
  6. まとめ

利用状況図(PDF)>>

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