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電波探検隊

※本プロジェクトは、終了しております。

周波数帯利用実態調査

3. 周波数利用状況(I)

以降の利用状況の概観、及びまとめには、上記リンクから「利用状況一覧(PDF)」をクリックして利用状況の一覧表を参照しつつお読みいただきたい。
まず最初に、3000-4200Mhz帯の利用状況について、(1)周波数利用の実態、(2)周波数の再配置や開放が可能かどうか、に焦点を当てながら概観していくことにする。
このエリアは、周波数割り当て原則、及び周波数帳によると

  • 3000-3100Mhz:各種レーダ(無線航行・無線標定業務)
  • 3100-3300Mhz:各種レーダ(無線標定・地球探査衛星・宇宙研究業務)
  • 3300-3400Mhz:各種レーダ(無線標定・固定・移動業務)
  • 3400-3600Mhz:放送事業(固定・固定衛星・移動(放送事業)業務)
  • 3600-4200Mhz:電気通信業務(固定業務)
  • 3625-4200Mhz:電気通信業務(固定衛星(宇宙から地球)業務)
となっている。
細かい利用状況を見ていくと、周波数帳からは
  • 3000-3100Mhz:無線標定用・船舶用レーダー(3050Mhz-3100Mhz)
  • 3100-3300Mhz:無線標定用
  • 3300-3400Mhz:空き
  • 3400-3600Mhz:放送事業・放送中継用STL回線(演奏所→送信所等)・放送中継波(固定)
  • 3600-4200Mhz:放送事業・放送中継用STL回線
  • 3625-4200Mhz:NTT中継回線、国際海事衛星機構(太平洋上の人工衛星)

というデータが出てくるが、これだけでは利用状況が判定できないので、日本無線局周波数表などのその他の資料を利用して割り出しを行った。
PDF資料の最初のページを見ていただきたい。以下の表の並びでデータが記載されているが、便宜上以下では列名を左から順にAからPまでアルファベットで呼称する。

周波数帯周波数割当原則1999年1月1日左の脚注主な用途周波数割当原則2002年2月28日左の脚注主な用途1999と2002の相違無線設備規則備考局数うち実験局数実用局数固定以外の実用局免許不要局の存在防衛庁関係
A列B列C列D列E列F列G列H列I列J列K列L列M列N列O列P列
※最右列「最新版からの変更」については記載していないため割愛

この表の中で、注目すべきはK列からP列の色つきの部分である。これは、その帯域における認可された無線局数(K列)、そのうち実験局(L列)、実験局を除いた実用局数(M列)、実用局の中で固定業務を除いたもの(N列)、免許不要局があるか否か(O列)、防衛庁関係で使用されているか(P列)ということを示している。
周波数の他用途への開放、あるいは再配置という観点から見ると、局数が多ければ、その帯域は込み合っていることになる。しかし、実験局は比較的容易に移動が可能なため、問題は実際に業務に利用されている実用局となる。
その中でも、固定以外の実用局(各種移動業務・無線標定等)が存在すると、設備の複雑性等から、一般には周波数帯の開放は難しいとされる。

また、厄介なのは免許不要局があるか否か(O列)である。免許不要局(たとえば、802.11b無線LAN等)は、不特定多数の人が各地で利用するために干渉問題や移行先などの検討が難しく、再配置は困難を極める。ゆえに、免許不要局が存在しない帯域のほうが開放がしやすいと考えられる。もちろん、P列の防衛用途で使っている場合は、再配置はきわめて難しいこと(在日米軍等との関係もある)は言うまでもない。

我々の調査結果によると、まず3000-3100Mhz帯については、局数が31認可されており、そのうち実験局が18、実用されている無線局は13局とされている。その中でも固定以外の無線局が計9波存在しているため、ここでの開放は難しいと判断される。
さらに、P列の防衛庁関係でも、防衛用レーダーに使用されていることが判明しており、この帯域の開放はかなり難しいといっていいだろう。

次に、3100-3200Mhz帯についてだが、これも3000-3100Mhz帯同様に、固定以外の実用局が7つの実用局すべてであるほか、防衛用レーダーとしての使用も確認されているため、同様に帯域開放は難しいと思われる。
3200-3300Mhz帯は、法規則上は3100-3200Mhz帯に同じということになっている。また、この帯域には電波天文用途に関する保護帯域が3260-3267Mhzで設定されている。

3300-3400Mh帯は、周波数帳データでは「空き」であったが、利用状況として、「空き」ということは十分考えられる。なぜなら、実用局数がゼロであるからだ。またここにも電波天文の保護帯域が設定されているほか、防衛用無線局が存在していることが明らかになっている。(ただし、防衛用無線局は他周波数帯に早期に移行すること、という注釈つき)この周波数帯は、防衛用無線局の動向しだいでは、開放の可能性がありえるかもしれない。

3400-3600Mhzは放送業務(中継用)に主に使われており、無線局数も大変多い。(実用局数の数は900を超える)また、移動局も6つ存在しており、周波数帯の開放は容易ではなさそうだ。
3600-4200Mhzは固定業務・固定衛星業務(宇宙→地球。ただし1無線局のみ)に使われており、無線局数はさらに多く、7000を超えている。これは、周波数帳によると主にNTTのSTL中継回線(マイクロ波中継設備)に用いられている。

4. 周波数利用状況(II)へ>>

  1. 総論
  2. 調査方法
  3. 周波数の利用状況(I)
  4. 周波数の利用状況(II)
  5. 周波数の利用状況(III)
  6. まとめ

利用状況図(PDF)>>

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